月刊『ジロリート』とは、コンサートフラメンコギター協会が発行する「ふぁるせぇた」に寄生する世界初の刊内寄生紙です。

興味のある方は、ぜひ「ふぁるせぇた」をご購読ください。
音響への尽きぬ興味 (1)          2003年5月25日 発行

 ギタルパのアイデアを思いついてから、音響への興味は尽きない。ギターのように抱えて(あるいは支えて)演奏する楽器はその楽器自体でどれだけ鳴らすかという研究がなされるが、床や机に置いて演奏される楽器は、楽器からそれらに伝わっていく音の影響も無視できない大きさを持っている。ちょうどオルゴールの箱のように…。

 楽器が鳴らされて振動が起こり、空気が震えて音となり、そのまま空中へ拡散していくと思いがちだが、実際は楽器を持っている手や支えている身体にも伝わり、楽器の振動の何パーセントかは吸収されて減衰し、音量や音色への障害となっている。(あるいは逆に鳴り過ぎないためのブレーキになっているかもしれない)

 床や机に置いて演奏する場合は、この振動の伝達あるいは吸収の影響が深刻で、ピアノやチェロで、床が板の場合と絨毯の場合では天と地ほどの違いが出てくる。ピアノやチェロのようにもともと音量の大きな楽器は、実際にはもっと大きな音を出そうと考える気苦労はなさそうだが、音量が小さく、床の振動増幅を期待できないギターのような楽器は、何とか楽器本体の音量を増やそうとギター制作家やギタリストたちが苦労してきた。

 ギタルパは机に置いて演奏することを基本と考えている。ひざに置いて鳴らした時と机に置いた時とでは音量に大きな差が出る。また机の大きさや素材、構造によっても大きな違いがある。また、音量だけではなく、音色も微妙に違ってくるのだ。つまり机も楽器の一部と考えられ、研究のしようによっては、ピアノに匹敵するぐらいの音量を出せ、微妙なニュアンスを持った音色の出せるギタルパ専用の机(もはや机とは呼ばないだろうが…)ができる可能性は十分にある。

 一度、演奏会場のホールの床にギタルパを直接置いて鳴らしてみたことがある。まさしくオルゴール効果で、ホール全体が揺れ動く(と感じる?)ほど響き渡り驚いた。ギタルパの楽器そのものは小さく、本体だけではギターよりも小さな音量であるが、音量増幅器(オルゴールの箱)を接続することによってピアノに匹敵するぐらいの音量を得られることが証明できたような気がする。(そりゃぁ、ピアノだって、箱をはずせば大して鳴らないに違いないって!)        (つづく)


 湖のほとり歩けば
                    桜の実(じろう)

 坂道の曲がる垣根に
                    薔薇香る(じろう)