月刊『ジロリート』とは、コンサートフラメンコギター協会が発行する「ふぁるせぇた」に寄生する世界初の刊内寄生紙です。

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オリジナルな曲          2003年11月25日 発行

 現在、CD『スペインの魅惑』発売記念コンサートツアーの真っ最中である。関東・東海地方はすでに終わったが、これから関西の3箇所の本番が続く。今回は、コンサートフラメンコギター協会主催のいわゆる自主公演が6箇所で、つまりはこれらの公演のすべての責任を背負うことになる。現地で共催あるいはお手伝いしていただく人たちあればこそのこのコンサート活動であるが、公演間近まで印刷や案内状の発送、チケットの受注発送など雑務が多く、練習に専念できる時間は少ない。曲の準備ができてからコンサートをしようとしていたら、現在のようなコンサート活動はできなかっただろう。「はじめにコンサートありき」である。

 思い返せば、数年前まで、コンサートの案内チラシの印刷の原稿を送るときに、新しい曲はタイトルのみで、実際には曲は何にもできていないことが多かった。チラシの印刷ができてきて、コンサートに間に合うように作曲する。不安でもあり、快感でもあった。どんな曲ができているんだろう? 他人事のようだが、できてくる曲が楽しみであった。

 適当に間に合わせて作るならできないことはない。しかし、オリジナルなアイデアが、ふと出て来る瞬間をぎりぎりまで待つ。オリジナリティーにあふれたアイデアであるほど、その後の作曲へのエネルギーは大きい。早いときは数時間でできる。しかし、無理やり作ろうとしているときは、アイデアが逡巡し、なかなかまとまらない。

 そんな活動を続けてきて、レパートリーも随分と増えた。オリジナルにこだわりながらも一般の聴衆の希望を取り入れ、よく知られた曲もかなり弾くようになった。それでもまだ言われる、「もっと知っている曲を弾いてください」と。そんなやりとりがあったある会で、私のファンの方が、「知られた曲ばかりが弾かれるようになるんだったら、ファンをやめます」という発言があった。嬉しかった。多くの人に聴いて欲しい、という気持ちはあるが、コンサートに多くの客を集めるためなら何でも弾く、ということではない。ギターを通じて私のメッセージを聞いてほしい。それはギターという楽器の面白さであり、音楽という芸術の多様な面白さである。その面白さは言葉で表せないからギターを弾いているのであり、言葉では感じられないことだから音楽で感じてもらいたいと思っている。

 最近、よく知られた面白い曲を見つけ、新しいレパートリーとして取り入れようと思っている。ポピュラーな曲を自分が納得できるオリジナルな味付けで編曲する。オリジナル曲以上に大変な部分もあるが、これも面白いかなと思うこのごろである。

 佐久から岡谷への道は秋色一色
  山越の近道ありや 秋惜しむ

 東京労音創立50周年おめでとう
  50年 勤労感謝の日に祝う
                    箸棒