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スペイン・コンサート漫遊記          2004年5月25日 発行

 初めて訪れたサラマンカの町はスペイン最古の大学のある美しい町で、アンダルシアの陽気で大雑把な雰囲気とは随分違い、清潔で格調の高い大学都市といった空気が漂い、また、5月も半ばだというのに意外に寒く、まだ冬のコートやジャンパーを着ている人が殆どで、スペインの初夏気分で訪れた我々を驚かせました。

 サラマンカでの公演は大学内にある日本・スペイン文化センターの主催で110席の小さなホールでしたが、よく宣伝が行き届いて開演時刻にはすでに満席になり、満席になればそれ以上は入れないという現地の慣習で扉が閉められ、それでも階段通路にも座る人がいるという状態で定刻にコンサートは始まりました。

 もともと、日本と同じように「話をしながらのコンサート」というスタイルでやりたかったので、事前に曲の解説や作曲の裏話などのネタをスペイン語で準備し、コンサートに臨みました。日本でのコンサートも昔はネタを準備したものですが、最近は行き当たりばったりです。「アマポーラの誘惑」には自作の詩(のようなもの)を用意し、初めて朗誦してみました。結果は大成功!朗誦のあとに拍手をもらえるとは思ってもいませんでした。スペイン語の詩にも様々な規定があり本格的に作ることはかなり難しいことですが、これをきっかけにもっと勉強してみようかなとも思っているくらいです。アマポーラの花は、本来ならば、このサラマンカの辺りでも一面に咲き乱れているはずでしたが、今年は予想外の寒さで遅く、まだちらほらといった状況。それでもこの曲はタイムリーでよかったようです。

 コンサート終了時には多くの人が立ち上がって拍手をしてくれ、特に、日本の歌を編曲した「あら!ふらめんか」と「さくらさくら・かごめかごめ・夕焼け小焼け・とうりゃんせ」のメドレーは評判が良く、「日本のメロディーはどのCDに入っているのか?」と訊く人、「懐かしくて涙が出そうだった」と言って近づいてきた日本人留学生の女の子など、大変手ごたえのある、気分のいいコンサートでした。

 翌朝、サラマンカをあとにし、約700km離れたグラナダへ向けて出発。今回のこのサラマンカへの旅は、私と共演の野口久子、以前に野口とスペイン語仲間であったOさんと、企業を定年退職しスペインにも何度か仕事で来たことのあるOさんのご主人の4人での旅行でした。現地で活躍するギタリストの河野兵部さんにコンサートの取次ぎから旅行の世話まですべてお願いし、マドリードからサラマンカの往復も河野さん一人の運転でした。

 マドリードでいったん河野さんとお別れし、我々4人はバスでグラナダへ向かいました。途中アルムラディエルという村で1回の休憩があり、グラナダへ着くまでに峠を越えていきます。高度が上がって気温が下がりだしましたが、グラナダに着いたらあの暑い初夏の日差しがあるだろう…と思っていたら、どんどん気温が下がりだし、グラナダに到着した時にはなんと11℃。サラマンカより寒い!「スペインではこの季節は暑いですよ」と言っていた私は、申し訳ない気分に…。

 そうこうしながらも、マドリードから約5時間でグラナダに到着。ホテルに到着したときは、時刻はすでに9時、一日がかりの移動でした。
                                                    (つづく)

 手のひらに木苺のせて里の道
 ハイキング手をとるふたり栗の花

一葦