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スペイン・コンサート漫遊記(3)          2004年7月25日 発行

 私と野口はコンサート会場のアントニオ・デ・トーレス記念館でリハーサル開始。大きなホールではないし石造りのスペイン建築のため音響は充分。その間、フランシスコは忙しそうに準備に励んでいる。今日のコンサートにはアルメリア市の後援がついており、市のサービスでワインとオードブルの軽食が振舞われ、会場は和やかな雰囲気になっている。近郊に住むフラメンコ関係者や、愛好家が多く集まっているようだ。もちろん、顔なじみの友人たちも大勢いる。ギター製作家でトーレスの研究家としても名高い、ホセ・ルイス・ロマニージョス氏も来てくれている。実はこの前日にアルプハーラの山道を超えてアルメリアに着いたとき、偶然にマドリード近郊に住んでいるはずのロマニージョス氏に出逢い驚いたのだが、わざわざ聴きに来てくれたようだ。コンサートに先立ち、フランシスコとロマニージョス氏ほかの挨拶があり、いよいよコンサートが始まった。

 第1部は私の独奏。サラマンカと同じように、自分の言葉で1曲ずつ話をし、反応も見ながらプログラムを進めてゆく。生真面目そうなサラマンカと違い、アンダルシアの土地柄か反応もよく、また客席になじみの顔も多いので話がしやすい。また、舞台の横にフランシスコが座っていたので、フランシスコにも話しかけたりして会場の気分を和らげるように気を使った。

 「アマポーラの誘惑」につけた自作の詩で、最後の部分の押韻が不完全なので、前日にフランシスコの奥さん、ホセフィーナに助言を求めていたのだが、もう一息自分でしっくりしないものがあり、サラマンカほど朗読に力は入らなかった。改めてもう少し勉強してみたい。

 私の独奏が終わって、第2部で地元の若いカンタオーラ(女性歌手)二人が歌い、会場はすっかりフラメンコのお祭り気分。この後でギターのフラメンコはやりにくいものだが、気を臆せず野口との2重奏で第3部。「アルハンブラの想い出」「幻想曲アランフェス」「石畳を歩いて」「アンダ・ハレオ」最後に「あら!ふらめんか」を演奏。アンコールに、「さくらさくら」をモチーフに日本の歌をメドレーにした「桜咲く境内で」を演奏。終わるつもりだったが、熱烈な「ミナミのルンバ」ファンがいて、「お笑いの町大阪ルンバ」として紹介し、フレット外しのパフォーマンスも入れて大喝采を受けた。

 スペイン人とは違うスタイルのフラメンコだが、自分のフラメンコとしてこのスタイルにこだわり続け、こうして評価してもらえることはことのほか嬉しい。私がスペイン人と同じスタイルでフラメンコを弾いたとして、「なかなか日本人でもフラメンコができるな」と思われるより、スペイン人にとって新鮮で聴いたこともないような日本人的なフラメンコ(と言えないかも知れないが)を演奏するほうが、より個性的でフラメンコだと思う。

長い一日が終わり、翌日はグラナダへ。河野号には全員乗れないので、私と野口は皆と別れて路線バスでグラナダへ。バスの出発まで時間があったのでアルメリアの町を歩いていたら、またしてもホセ・ルイス・ロマニージョス夫妻にばったり。3日連続で会ってしまった…。
                                                     (つづく)

 浴衣の娘サンダル履いて袖まくり

 たこ焼きの床机に座り夕涼み

                                                       一葦