月刊『ジロリート』とは、コンサートフラメンコギター協会が発行する「ふぁるせぇた」に寄生する世界初の刊内寄生紙です。

興味のある方は、ぜひ「ふぁるせぇた」をご購読ください。
二つのコンサート          2005年3月25日 発行

 入院手術による約2ヶ月半のブランクをあけて、久しぶりに演奏をしてきた。ひとつは東京での結婚式、もうひとつは群馬県の専門学校での卒業祝賀会。

 結婚式では、短期間ではあったが東京でのギター教室に通ってくれ、現在は政治家を目指してしっかりした活動を続ける新郎が、その彼をしっかり支える新婦のお色直しの入場にふさわしい曲を弾いて欲しいとのことで、果たしてどんな曲で私らしい演出ができるのか、せっかくのおめでたい席だから、できるだけの可能性を探ってみようと思っていた。

 「花嫁人形」という声もあり、いろいろな編曲を試みてはいたのだが、どうもこれだけではありきたりで、私らしさが出せないのではないかと直前まで想を練っていた。当日の昼ごろ、宿泊していたホテルの自室でギターを弾いていたとき、ふと「花嫁人形」が新鮮な響きで終わる音を見つけ出した。「これなら繋ぐことができる!」そう確信して「アーモンドの小径」に繋いだ。後は本番で弾くのみ。

 清楚な白無垢から華やかな赤の和装のお色直しに、軽やかな「アーモンドの小径」は似合っていたと思う。二人を祝福することばを述べ、「アマポーラの誘惑」と「アルハンブラの思い出」の2曲をプレゼントして大役を終えた。

 翌日、群馬県太田市へ直行。歯科衛生士を育てる専門学校で、この日は国家試験合格祝賀会とのこと。運良く前日東京にいることができたのでこの仕事を引き受けることができたのだが、依頼を受けたのはほんの2週間ほど前であった。この専門学校は前橋に情報経理などを教える本校があり、高崎には美容専門学校も併せ持つ関東でも有数の専門学校である。理事長が私の演奏を気に入って下さっていて、学生たちに聞かせてやって欲しいと年間5回ぐらいのコンサートをそれぞれの学校内で催してもらっている。

 今回の依頼は「歯科衛生士合格祝賀会」とのことで、「始めは景気よく後半はしんみりと」と、感激して涙を誘うような方向でプログラムを組んで欲しいという理事長からの提案があり、私にとっては非常に難しい盛り下げ方(?)で曲目をどう組もうかと苦慮した。「あら・ふらめんか」「アンダ・ハレオ」「アマポーラの誘惑」「幻想曲アランフェス」「アルハンブラの思い出」と並べたが、やはり物足りなかったのか、理事長自身がアンコールを連発。「幻想のロマンス」「アーモンドの小径」を付け足した。私の意識では、最後まで盛り上げないほうが良いと思っていたが、もうどうでもよかったのかも…。

 帰り際には学生たちが機嫌よく写真に納まったり、別れの挨拶を言ってくれたりで、受けはよかったのかなと安心できた。

 久しぶりのコンサートであったが、指の動きと演奏への気力に確かな手ごたえがある。これから演奏の機会の増えていくシーズンとなるが、新しい曲作りへの意欲も含め、今年はもう一段飛躍できそうな気がする。

明治記念館にて婚礼あり
 花冷えの明治の館誓いあり

群馬県の帰り、和田峠を通過
 たらの芽の籠を選びし和田の宿

                                                       一葦